お香20種を楽しんで頂くための豆知識
お香は、古くから日本人の間で使われてきました。
香りは、ヨーロッパで発展していった液体を使った『香水の文化』と、東洋で発展していった固形の原料に火を使い温めて使う『お香の文化』と2つに分かれて発展していきました。
ヨーロッパでは花や草などの香り成分を抽出した液体をつくり、香水文化が進化していきました。さらに、アロマテラピーのように香りを使ってリラックスしたりやストレスを解消するものとして幅広く使われています。
一方、東洋では、原料を温めて使う『お香文化』が、独自に発展していきます。東洋のお香は漢方薬が使われていまして現代でもそれは変わりありません。
日本のお香の最古の記録は、『日本書紀』に記されています。淡路島に流木が流れ着いた時、聖徳太子は香木(こうぼく)というものをすでに知っていました。
平安時代になると中国の鑑真和尚が薬の調合といっしょにお香の調香を日本に伝えます。情報を伝えるために日本に着いた鑑真は、旅の疲労から目も見えなくなっていたとされています。
鑑真によってもたらされたお香は、時代とともに変化し発展していきます。
平安時代になると、薫物合せ(たきものあわせ)・煉香へと発展していきます。この頃の香は、和歌や舞や笛などが上手であることと同じレベルで、良い香りを創り出すこと、香りを生活に取り入れられることが貴族のたしなみだったようです。
それは、紫式部の世界最古の長編小説『源氏物語』や清少納言の『枕草子』には、香り、匂いという文字が頻繁に登場していて、当時の貴族たちの間で、香りが取り入れられていたことが読み取れます。
平安時代の生活をイメージしてみると現代よりも、雑音もなく、空気も澄んでいたことはいうまでもありません。
人々が自然のいとなみを感じる機会も現代よりもはるかに多かったわけです。
そんな感性豊かな平安貴族のあいだで楽しまれていたのが、漢方薬を蜜で煉ったお香、すなわち『煉香(ねりこう)』です。平安貴族たちは、個々がそれぞれの香りをもっており、香りで人それぞれを判断したといわれています。
煉香は、現代では、お茶席の炭の匂いを消すものとしても使われていますが、複雑で奥深い香りを楽しめることから多くのファンのあいだで今も楽しまれています。
鎌倉時代になると、武士の間で香木が焚かれるようになります。武士たちは香木の優劣を競ったという時代があります。
東大寺の正倉院にある『蘭奢待(らんじゃたい)』には、4つの切り取ったあとがあります。足利義政・織田信長・明治天皇、そしてあと一人は謎ですが、徳川家康ではないか?と云われています。なぜなら、徳川家康は正倉院を3度も開けさせたという記録があるからです。
室町時代になると、香りはアートへと進化していきます。このころになると、いろんな芸道が確立されていきます。書くことがアートになると『書道』・お茶がアートになると『茶道』・花がアートになると『華道』というように、香りのアートも『香道』へと発展していきます。
香りを楽しむことから道として新たな発展をしていったわけです。
古来から楽しみや道として発展していった日本の『お香文化』は、明治になると、西洋の香り、すなわち香水の文化と融合します。
古風な漢方薬を使った和風の香りから、爽やかで現代的な香水系のお香が誕生します。
今まで火を使わなかった西洋の香水の香りがお香として創られたのです。
しかし、明治・大正・昭和という激動の時代は、お香は、今ほど生活に密着したものではありませんでした。
戦争もあり、漢方薬原料の問屋が建ち並んでいた大阪の堺などは空襲により、原料も焼けてなくなりました。そして輸入品だった漢方原料がなくなってしまい、代用品として日本の杉が原料として使われ『杉線香』と呼ばれるものが変わりに一般に使われるようになります。
いつしか日本の線香は香りを楽しむことなく、儀式のために使われるものとなっていくのです。
漢方薬原料が不足したことでつくられた杉線香が一般的になったことで、本来の素晴らしい香りのお香が、まっ香くさい・線香臭いなどと云われるようになってしまいました。
また、つい10年ほど前までは精神的なゆとりよりも、むしろ物質的な豊かさが優先されていた時代でもありますので、一般的に日本人の香りに対する関心の高まりは、ごく最近で、21世紀になってからでしょう。
現代は、ストレス社会といわれており、人々はリラックスをもとめたり、癒せる空間をさがしています。
お香は、現代ではストレス解消の一つの道具であったり、ワンランク上の香りのある上質なくらしを支えるひとつのアイテムであったりします。
このお香20種をきっかけに皆さんの生活に今まで使っていなかった『お香の香り』を取り入れて頂き、古来の日本人がもっていた生活の知恵を感じて頂ければ幸いです。
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